【コラム】宇宙飛行士は骨粗しょう症薬を飲む
介護士の皆さんこんにちわ。
日々、高齢の方々と向き合っていると「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」や「尿路結石」という言葉には慣れっこですよね。
これらの病気の薬が宇宙で使われているって知ってましたか。
今回は「宇宙と介護」という一見関係なさそうな角度からお話ししてみたいと思います。
宇宙が近くなっている
2021年は宇宙旅行元年とも言われ、JAXAの日本人宇宙飛行士、野口聡一さんや星出彰彦さんが国際宇宙ステーションに滞在したほか、2021年7月には、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏が設立したブルーオリジン社が高度100km超えの宇宙飛行を達成。同年10月には2度目のフライト成功。そして、同年12月には。日本の民間人として初めて国際宇宙ステーションに滞在した前澤氏がニュースで度々報じられました。
人類は少しずつ宇宙へ向かって進んでいます。
宇宙では骨密度が10倍の速さで減少する
宇宙空間は無重力…ではなく微小重力です。細かいところは話がそれるので割愛。
重力のほとんどない空間にいると骨は10倍の速さで骨の量が減っていくそうです。JAXAによると、
1Gの重力の地上では、運動によって骨に荷重刺激が加わり、骨にカルシウムが蓄積されます。一方、微小重力の宇宙では、骨への荷重負荷がかからないため、骨からカルシウムが放出され、骨粗鬆症患者の約10倍の速さで骨量が減少します。
ということで、宇宙に長期滞在すると骨がもろくなってしまうんです。宇宙空間では体にほとんど重力がかからないため、体を支えようとする筋肉や骨はあまり使われなくなり衰えてしまいます。加齢現象が起こるんです。
また、NASAのデータによれば、
大腿骨頚部(足の付け根の骨)の骨強度は1ヵ月に平均2.5%減少、6ヵ月間の宇宙滞在で平均15%減少するとの報告
ということで、宇宙飛行士は骨粗しょう症の治療薬を飲み、そのほか1日2時間の運動が義務付けられており、宇宙食にはカルシウムなど骨を補う栄養素が使われています。
また、骨が溶け出してしまうことから尿路結石にもなりやすいそうです。これも同じ治療薬で改善する可能性があることがわかっています。(参照:https://humans-in-space.jaxa.jp/kibouser/pickout/73102.html)
もし高齢者が宇宙に行ったら
国際宇宙ステーションに最長期間の6ヶ月滞在した宇宙飛行士は、帰ってきてから3週間程度リハビリ入院します。宇宙は身近になってきたとはいえ、まだまだ医学的には問題山積みなんですね。
もしも、高齢者が宇宙に行ったらどうなるんでしょう。
これまで宇宙に行った最高齢は、2021年10月にブルーオリジン2回目の飛行でウィリアム・シャトナーさん90歳です。映画「スター・トレック」で「カーク船長」を演じた俳優さんです。7月の1回目の飛行ではウォリー・ファンクさん82歳が搭乗しています。ブルーオリジンの宇宙滞在時間は約4分ですから実現できたと言って良いでしょう。
骨や筋肉だけでなく、微小重力では血液が足下まで下がらず上体に集中してしまい、頭の方に血液が行きやすくなります。ずっと逆立ちしているように顔がむくんでしまうそうです。
介護職としては、恐ろしくて行かせられないですね。
宇宙と介護の可能性
身近な病気である骨粗しょう症や尿路結石の治療薬が宇宙をきっかけに研究されることで、もしかしたら地上でも使える新しい治療薬が誕生する可能性には淡い期待を寄せてしまいます。
それだけでなくて、もし高齢者が誰でも宇宙に行けるようになれば、たとえ足が不自由だったとしても、無重力空間で自由に動き回る姿を想像してしまいます。
そんなことははるか遠い未来のことかもしれませんが、地上から見れば宇宙という大変特殊な空間で、高齢者の様々な病気に対する発見があってもおかしくないと思います。
架空の話ですが、漫画「宇宙兄弟」で難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)の治療薬の研究が宇宙ステーションで行われたように、宇宙には可能性と創造に満ち溢れているように感じます。
火星探査機や月面ローバーのような、障害物を認識し回避する技術が車イスに搭載されたら面白そうとか。全く違う分野の技術がもしかしたら役に立つのかもしれません。
未だ見たことのない何かが、明日の介護につながる。たまにはそんな想像をしてみてもいいのではないでしょうか。